文系醫學生の記録

北海道大學醫學科學生井上大輔が書いてゐます.

医学とことば

rib と costa

肋骨をラテン語では costa、英語では rib と呼ぶ。では英語で解剖学を勉強するならば costa という語は忘れていいのか、と言えば、そんなことは全くない。Iliocostalis muscle, subcostal vein, sternocostal triangle, と少し難しい言葉になると costa が用…

free diaphragma

横隔膜をラテン語では diaphragma と言う。英語では diaphragm だ。-phra- か -phla- かなかなか記憶できないので、「free diaphragma」という語呂合わせを考えた。Fr- と -phr- の対応で記憶しようという戦略だ。Free は英語で diaphragma はラテン語だ。こ…

「膜電位」という呼び方は bad knowhow

細胞膜の外側を基準としたときの細胞膜の内側の電位を「膜電位」と呼ぶ。これは bad knowhow だと思う。なぜならこの名からは膜外を基準とするのか膜内を基準とするのかわからないからである。「細胞電位」ないし「細胞内電位」と呼ぶべきだと思う。

医学における bad knowhow

Bad knowhow (http://0xcc.net/misc/bad-knowhow.html) という概念を半年ほど前に知り、強く惹きつけられている。どこかで「UNIX は bad knowhow の塊」という言葉を聞いて、おもしろいなと感じた。 「医学 バッドノウハウ」で検索すると、医学のアドホック…

Vitamin K

『ストライヤー生化学』第7版の p. 282 によれば、この名称は、Sweden 語で「凝固」を意味する koagulation から来ているそうだ。

略語

私は医学の勉強をするとき、メモやノートに以下の略語を使っている。 a: active c: cell d: drug e: enzyme i: inhibit m: mouce p: protein, peptide r: receptor 肝として自分で得意に思っているのは、a に active を割り当てたら、activate, activator, a…

クロロフィル

クロロフィルは chlorophyll である。Chloro は緑、 phyll は葉である。これをカタカナで書くとフィルが phil に見えて、neutrophil (好中球) や eosinophil (好酸球) の仲間に見える。やはり外来語のカタカナ表記は有害であるという、いつもの結論に至る。

rectus と rectum

英語で、 腹直筋は rectus abdominis muscle 、 直腸は rectum である。実は rectus と rectum は同じ形容詞である。男性名詞を修飾する形が rectus で、中性名詞を修飾する形が rectum だ。ここで述べたことは、ラテン語の文法である。ラテン語の教科書を開…

神経科学

「運動状態」は英語では「motion state」と言う。Motive と static は反意語だから、従って motion state も元来は形容矛盾であるが、Newton の運動の第1法則の発見によって物体が静止している状態と等速度運動をしている状態は「力の働いていない状態」と統…

脳神経

人体の神経は、中枢神経と末梢神経に分類される。中枢神経とは脳と脊髄のことである。末梢神経は、中枢神経から臓器・感覚器や筋に伸びる神経である。 末梢神経は、さらに脊髄神経と脳神経とに分類される。脊髄神経は脊髄から伸びる神経であり、脳神経は脳か…

hydrochloride の由来

中学2年の理科の授業で、化合物の命名法を習った。曰く、 ・HCl は塩化水素 ・KCl は塩化カリウム ・MgO は酸化マグネシウム ・CO_2 は二酸化炭素 というふうに、化学式での元素の順番を逆の順で読んで日本語名とするのが総則である、 という説明だった。当…

共軛と共役

用字制限による代替表記のうちで,「共役」ほどまずいものはほかにないのではないか.初見でキョウヤクと讀める人は稀なやうだし,長じてもキョウエキと讀み續ける人が散見される.さらに,もとの用字「共軛」の、「軛 (くびき,shaft) を共にする」といふ見…

ATPase

ATPase は日本では「エーティーピーアーゼ」と発音されている。しかしよく考えれば奇異なことだ。英語に揃えるならば「エーティーピーエース」だし、ドイツ語に揃えるならば「アーテーペーアーゼ」になる。 とは言うものの、「エーティーピーアーゼ」という…

eu と優

Eu という接頭辞がある。ギリシア語由来で、「真正の」という意味だ。用例には、euchromatin (ユークロマチン)、eukaryotic cell (真核細胞)、eugenetics (優生学) がある。最後の語は、eu がそのまま「優」に対応しており、わかりやすい。 ここで思うのは、…

N 響と G protein と

「NHK 交響楽団」はよく「N 響」と略される。昔この略語を奇異に感じた時期があった。なぜならば、「N」は「NHK」の略であり、さらに「NHK」は「日本放送協会」の略であるところ、「響」は単に「交響楽団」の略であって、いわば「N」はレベル2の略語、「響」…

purine 体は「純尿体」

痛風の原因物質として有名な purine 体の「purine」は pure + urine から来ているそうだ。日本語で言うならば「純尿体」だろうか。

タンパク質と蛋白質と

日本語の術語のうち元来漢字表記していたものは漢字で書くべき、カタカナに直すべきではない、というのが私の立場である。が、自分の考えにあえて自分で反論してみることも大切であろう。 タンパク質は、漢字では蛋白質である。「蛋」は卵と同義である。よっ…

燐とリンと

リンという元素がある。漢字では燐である。私は漢字で書いたほうが、この元素と火との関連が見えてよいと思う。しかしカタカナで書いたほうがどう発音するかが明瞭にわかり、これによって多くの人がリンについて知ったり考えたりすることができるとも考えら…

ピテクス

Isaac Asimov 『科学の語源250』を読んでいる。p. 32 の「猿人」の項に、ギリシア語で pithekos が猿、anthropos が人で pithecanthropus (猿人) という語が生じたと書いてある。北大の training center にピテクスという running machine があるが、「猿」…

リンと燐

リンは漢字で燐と書いてこそ、白燐の発火しやすい性質を思い出しやすくなる。手書きでリンと書くのは構わないと思うが、印刷や PC では「燐」と書いてゆくのが良いと思う。他の物質もすべてそう。

Décollement と décolleté

法医学の用語にデコルマンというものがある。これはフランス語であり、綴りは décollement だ。動詞 décoller (剥がす) の名詞形である。 Décoller の類似の動詞に décolleter (切る、開く) がある。これの過去分詞が décolleté であり、「デコルテ」という…

外来語のカタカナ表記は不便

リゾチームという物質がある。これを lysozyme と書けば lysis (分解) と enzyme (酵素) に関連があることが明らかである。カタカナで書いているとこういうことに気づくのが遅れる。あたかも熟語をカタカナで書くような愚行である。例えば「塩素」と漢字で書…